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理事長挨拶

 
折舘 伸彦理事長
 
日本喉頭科学会理事長
折舘伸彦

日本喉頭科学会理事長 折舘 伸彦

 この度, 梅野博仁前理事長の後任として第8代日本喉頭科学会理事長に就任いたしました。誠に光栄ではありますが、その責任の重大さに身が引き締まる思いでございます。
 日本喉頭科学会は、1973年から1988年まで毎年1~2回開催されていた喉頭基礎問題研究会を前身として、1989年に耳鼻咽喉科学関連の19名の教授が発起人となり、喉頭科学の進歩・発展に寄与することを目的とし、日本耳鼻咽喉科学会の関連する学会のひとつとして、発足しました。現在会員数は1000名を越え、新知見を目指した会員の切磋琢磨と、相互の情報交換や共同研究という目標に向かって専門性の高い学会としての活動が行われています。
 喉頭の機能である呼吸・発声・嚥下は、人が人らしく生きていくうえで欠かせない大切な機能です。喉頭科学はこの極めて重要な器官である喉頭を扱う学問です。喉頭麻痺や喉頭狭窄に対して音声や呼吸状態を改善させる手術や、声帯ポリープ、喉頭乳頭腫などの良性疾患から喉頭悪性腫瘍に対する手術、嚥下障害を改善させる手術など、喉頭の機能を改善させる、あるいは生命を守る外科手術は喉頭科学を専門とする耳鼻咽喉科・頭頸部外科医の腕の見せ所です。
 本学会の設立以前より、日本の喉頭科学には世界のリーダーとして名を馳せた、多くの優れた先輩方がおられました。近頃気になるのは、このような歴史を知って喉頭科学に興味を持ち、自身の専門分野とする若い医師たちが以前より少なくなっているように思われることです。日本全体がここ2-30年間、長期的視野を失っており、国からの大学運営資金や研究費の減額や事務作業量の増大に若い医師たちが押しつぶされそうに見えます。また、目先の業績、とくに役に立つ研究のみを追い求める風潮が強まり、社会全体の金銭至上指向とも結びついているように思えてなりません。そのような状況では、彼らが喉頭科学が本来有している神秘性に魅せられる機会にめぐり会うこともなかなか難しいのかもしれず、現在の学会執行部には、将来を背負う医師たちや増加している女性医師たちが喉頭科学の基礎研究、臨床研究に取り組めるような機会を提供し、環境を整えることが求められているのではないかと感じております。
 最後になりますが、今までの歴代の理事長の先生方が築いてこられた本学会の伝統を継承しつつ、これからの喉頭科学会を発展させていきたいと考えております。会員の先生方におかれましては、より一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。