理事長挨拶 |
梅野博仁 |
日本喉頭科学会理事長 梅野 博仁 この度, 塩谷彰浩 前理事長の後任として2019年3月に, 第7代目日本喉頭科学会理事長に就任いたしました. これまで本邦の優れたlaryngologistが喉頭科学 Laryngologyに寄与してきた功績を鑑みますと, その責任の重大さに身が引き締まる思いでございます. 本学会の前身は喉頭基礎問題研究会で,1973年から1988年まで毎年1~2回の研究会が開催されていました. その後,喉頭科学の進歩・発展に寄与することを目的に, 1989年に日本耳鼻咽喉科学会の関連学会として本学会は設立されました. 初代会長(理事長)の平野 実先生は,Laryngologyが耳鼻咽喉科・頭頸部外科学のsubspecialtyであることを明確にするため,当初は日耳鼻専門医だけが本学会の正会員であり, 他の会員は準会員とされました. この規約は後に改定されましたが, 本学会は創設時より,現在の専門医制度における2 階部分のような専門性の高い医師で組織する,研究志向の強い学会を目指しておりました. 世界的にも権威のある, 米国喉頭科学会(American Laryngological Association)とならぶ学会運営を意識されていた背景も伺えます. 本学会の設立以前より, 本邦におけるLaryngologyのレベルは国際的にも非常に高く, 諸外国から注目されてきました. 日本のLaryngologyの歴史には, 世界のリーダーとして名を馳せた, 優れた多くの先輩方がいらっしゃいます. しかし, ことばのバリアのために全ての研究が知られている訳ではなく, 設立当時は, 国際的な発信の場を作る必要性がありました. 本学会は設立からすでに30年以上が経過し、今では会員の先生方も1000名を越え, 国際的な発信の場を持つ専門性の高い学会として世界のLaryngologistを交えた活発な活動が行われるようになりました. 喉頭の機能である 呼吸・発声・嚥下は, 人が人らしく生きていくうえで欠かせない大切な機能です. 喉頭科学はこの極めて重要な器官である喉頭を扱う学問です. 喉頭麻痺や喉頭狭窄に対して音声や呼吸状態を改善させる手術や, 声帯ポリープ, 喉頭乳頭腫などの良性疾患から喉頭悪性腫瘍に対する手術, 嚥下障害を改善させる手術など, 喉頭の機能を改善させる, あるいは生命を守る外科手術はlaryngologistの腕の見せ所です. また, 喉頭科学の基礎研究では喉頭・気管の再生医療, 反回神経麻痺の改善に向けたトランスレーショナルリサーチなどが広く行われています. 世界中の医学会において, 耳鼻咽喉科学はspecialityの高さから人気の分野であり, 中でもLaryngology はその最たる部門です. 恩師からの教訓ですが, 学門の発展にはcompetition(競争)とcooperation(協力)の二つのCが必要です. 会員相互の新知見を目指した切磋琢磨と, 情報交換や共同研究といった方がわかりやすいかもしれません. 会員の先生方におかれましては, Laryngologyの進歩・発展のために, より一層のご支援とご協力をお願い申し上げます. |